現在、PCや携帯電話、スマートフォンの普及により、印刷物の需要は少なくなっています。人気がある、もしくはかさばる物であってもデータ化さえされていれば、いつでもどこでも手軽に読むことができてしまいます。新聞や折り込みチラシなどに関しても、すべて椅子から一歩も動かずに確認することができます。ただしそれは、求めたい情報が明確なときにのみ有効です。
一方、印刷されたものはどうでしょうか。情報化されたものと比べれば不便に感じるものも多いですが、一つの情報だけ求めていては「知りえなかった情報」も一緒に入手できるということは印刷物ならではの利点でもあります。たとえば辞書なども最近は電子辞書などが主流になりつつありますが、紙媒体の印刷物の場合はその前後左右の語彙も自然に目に入り、その意味が頭に残ることも少なくないでしょう。
人気のある本をダウンロードして読むのは簡単ですが、書店へ足を延ばせばその本を探し手に入れるまでに他にも興味のある本や知らなかった本に巡り合えることもあるものです。何より、印刷物の良さは「曖昧にぱらぱらとめくることができる」点にあります。画面で見るものはページ指定や1ページづつしか見たいページを探 すことはできませんが、実際手に持っているものはざっと目を通し、簡単に探すことができる。何度も読み返したり、他のものと比較をしたりすることも容易です。
現在、なんでもPCやスマートフォンで作業できるようになっていますが、データ化されたものと印刷物のそれぞれの良さは全くの別物であるということをしっかり認識し、必要に応じて使い分けをしていくことが重要ではないでしょうか。
データ化された電子書籍にはどうも親近感を覚えない、という方も多いのではないでしょうか。そのような方にとって、書籍と名が付くにはどうしても紙に印刷したものでないとしっくりきません。紙の質も良くなり、印刷方法も変わりました。紙への印刷はほぼ完ぺきなところまで来たように思います。更に紙がもっと薄くならないか、軽くならないか、写真の印刷は本物の写真の様にならないのかなど技術の追求が行われているようです。
わたしたちは毎日印刷物に接していますが、新聞紙がその最たるものでしょう。以前は通勤電車の中で新聞を読んでいると目的地に着く頃には手がインクで薄黒くなったものです。今の新聞はそれが全くありません。新聞紙の目方も軽くなりました。新聞社によって若干軽重に差はありますが、確かに軽くなっています。
それにカラー印刷がすこぶる良くなりました。以前は色が滲んだり、色がずれたりして散々でしたが、技術改良により随分良くなりました。印画紙の写真に近くなってきました。気に入った写真を切り抜いて額縁に入れて部屋に飾っても、普通の絵画のように見えてしまいます。
書籍に於いてもしかりです。文字を指先でなぞるとごつごつと感じた印刷もありました。読者にとってまさに印刷してあると実感できる確かなものでした。PCの普及でそれは無くなりましたが、紙への印刷には言い表せない味があります。
データ形式の電子書籍がすべて印刷物に代わるとはとても想像できません。紙への印刷は今後も末永く生き残るはずです。今後も印刷は技術開発を重ね、情報を提供する技術としてますます発展することを心から願います。