ではオフィスとか自宅とかで、極々当たり前のように行われるようになった印刷なんですけれども、このような状況に至るまでは長い道のりがありました。というわけで、印刷技術の進歩について歴史的なことも踏まえて簡単に紹介します。
印刷というと、印刷機と紙をイメージすると思いますが、発明されたのは紙のほうがずっとずっと先です。パピルスのように紙の原型になったものは紀元前から存在しましたが、この頃の紙は紙といえるような状態ではありませんでした。現代の私たちが思い浮かべるような紙が発明されたのは、2世紀頃の中国と言われています。
印刷というものが行われ始めたのはそれよりもずっと後で、7世紀頃の中国と言われています。印刷というと芋版などを思い浮かべるとわかりやすいと思いますが、あの版に当たる部分は、当時は木や土を固めて焼いて作った陶磁器を使っていました。でも、それだと使っていくうちに欠けてしまったり壊れてしまったりして使えなくなってしまいます。それで、金属でつくられた版が13世紀頃にできたと言われています。
その後、15世紀頃にグーテンベルクによって活版印刷機が発明され、印刷技術が急速に普及しました。そのためか、印刷業界ではグーテンベルクの名前が今でもとても有名です。実は、ドイツのマインツというところにグーテンベルク博物館というものがあって、当時の印刷機や金属活字版、印刷物などが展示されているので、印刷に興味がある方は見ておいて損しないと思いますよ。
活版印刷というのは、版に凸凹をつくって、凸の部分だけや凹の部分だけに印刷インキをつけて印刷するというものなんですが、これでは版をつくるだけでも結構大変です。そこで18世紀頃に発明されたが平版印刷です。平版印刷だと版自体は平なんですが、凸凹の部分を化学的に作ります。
このように印刷技術の進歩の過程をたどってみると、印刷以外のことにも意外と関係していたり、私たちの生活とかにも身近に関係していたりして、ちょっと身近に感じられますね。
印刷技術の歴史は、今から560年ほど昔にまでさかのぼります。
今から560年くらい前の15世紀、ドイツ人のヨハネス・グーテンベルクがぶどう搾り機を改造して活版印刷技術を発明したのが印刷技術の始まりです。これをもとにして、18世紀にドイツ人のアイロス・ゼネフェルダーにが平版印刷技術の原理となるものを考案しました。
19世紀に入ると、円圧印刷機が誕生し、平圧印刷機から円圧印刷機へと移行されました。蒸気機関を使って駆動する円圧印刷機によって生産性が目まぐるしく高まりました。その後、様々な形の印刷機が試行錯誤のもとに生まれ、そして、19世紀の終わりに、輪転印刷機が誕生しました。
しかし、この5世紀間の印刷技術の進歩は20世紀における印刷技術の進歩と比べるとほぼ無に等しいと言っても過言ではありません。印刷技術自体は560年もの歴史を持つのですが、印刷技術が急速に伸びてきたのは20世紀に入ってからです。それまでの間は、本当にグーテンベルクの印刷以来大きな進歩も見られず、初歩的な印刷技術だけで印刷が行なわれていました。
20世紀に入るとオフセット印刷が飛躍的な進歩を見せました。18世紀にゼネフェルダーが発明した平版印刷の技術が、20世紀になって生かされたのです。この技術の進歩のおかげで、印刷のスピードは飛躍的に早くなり、文書類の大量生産ができるようになった訳です。
その後、グラビア印刷機やスクリーン印刷機などのさまざまな印刷機が生まれ、現在、幅広く使われているデジタル印刷機というものが生まれました。